全力でご対応させていただきますことをお約束いたします。
前回の続きです。以下、パソコン整備士協会の了承を得た上で全文を掲載します。記事中で「ルキテック」「橘」とあるのが、データハンターです。データハンターは、ルキテックのパソコン修理事業からスピンアウトする形で立ち上げた新部門です。
パソコン修理・データ復旧「業界の技術巧者」が語る。本音座談会~後半~
情報社会の中、スキルで人助け。これが僕らの仕事!
下田商会/ルキテック(※注・データハンター)/PCレスキュー/株式会社データサルベージ
前回の前半に引き続き、パソコン修理やデータ復旧会社を経営する4人の社長に、現場の裏話や本音を語っていただいた。
橘 みなさん、他社さんの価格をネットで調べられているとは思いますが、自社の価格はどうやって決めていらっしゃいますか?価格決めは本当に難しいですよね。
下田 うちは、よその価格はまったく気にしていないですね。時間工数とかかった材料費で計算する。その代わり出張はしない。割に合わなくなっちゃいますからね。持ち込みか郵送です。物理障害だと、「データ復旧会社」とうたっているところでは、30万、50万と平気で取りますが、うちは5万円くらいしか取りません。以前、東京の一等地にある復旧会社で見積もりをとった物件がまわってきましたが、Aラベルで価格はなんと30万。実際に調べてみると、ほとんど障害がなくてパソコンで見ることができる状態でしたね。「これdo台」なんかを使うクラスで50万ですからね。
監物 基本的にうちは、修理屋というスタンスをとっていますから、Bラベル程度までなら5万円。価格も大事ですが、サービスの部分でしっかり固めていかないと難しいなとも感じます。
橘 改定前は、どんなにスキップをかけても15660円と価格を決めていました。でも、データに対する価値観は、人によっても違いますしね。1万円で取り出しますよと言っても、それならやめるという人もいますし。
監物 そうですよね。でもせっかくパソコンを直しても、それで終わりではまた同じことの繰り返し。その人がどうパソコンを使いたいのか、どういう使い方をしているのかまで聞いて、その状態に合わせて直してあげるのも大切だと思っています。ところで皆さんはサポート契約とか、されていますか?うちはあまり取ってないのですが。
橘 うちも2社くらいと少なめ。月額だと何万も取れなくて、それほど効率もよくない。
監物 そう考えると、スポット契約のほうがよいですよね。
下田 たしかにあまり細かなサポートだと儲けは出ないですからね。
この業界は儲かる?儲からない?
ところで、最近はデータ復旧やパソコン修理の技術を身に付け、独立を目指す人も多い。そこでみなさんの「儲け」がどうなのか、ダイレクトにうかがってみた。
橘 儲かるかと言われると、それほどは儲からない。でも食べられないこともない(笑)
下田 まさにそんな感じです。僕は同年代の平均年収と比較するとそれよりはいいかもしれないですね。数をこなしているのと、特殊な得意先があるのは強み。そういった客先がどんどん増えればね。そういう意味で言えば、僕なんかは地元手「飲み屋営業」しているようなもの(笑)。
橘 やっていけるかどうかは、クチコミを大切にしたりコミュニケーション能力を高めることも必要ですよね。
監物 スキルはもちろん大切だけど、技術だけが秀でていてもやっていけない会社はありますしね。
データ復旧で問題となるもののひとつに、複製の作成や機密保持契約などグレーゾーンがある。そのあたりの考え方はどうなのだろう。
橘 最近、立て続けにあって困ったのは、パスワードの解除要請。気持ちは分かりますが、結局断りました。
下田 うちにも依頼が来ますが、これはできないですね。データをそのまま取り出すことはできても、パスワードは解除しない。
監物 難しい部分は多いですね。デュプリケータでデータを取り出してクローンを作れば、同じパソコンを2台作ることも可能ですしね。
下田 だからこそ、技術者側のルールやモラルが問われますよね。
監物 たしかにそうですね。大切にしていたデータが復旧したり、問題が解決すればお客さんが喜ぶことは分かっていても、触れられない部分も多い。そのあたりにジレンマを感じながらもモラルを守りながら、同業者はみな、試行錯誤していると思います。
阿部 データの復旧なども見方によれば、ハッキング行為ととられることもあるでしょうしね。僕らはそれを仕事にしているからこそ気を使いますよね。それに、データ復旧業界やパソコン修理業界にはさまざまな法律の壁があると感じています。しかも今の法律全般は、昨今のクラウド化や仮想化に対応しきれていない。そろそろそれを見直してもいい時期ではないかと思います。
「MASAMUNE」開発の思いとは
下田 しかし「MASAMUNE」はすごいよね。「これdo台」は便利だけど、ハードディスクを順方向からしか読み取ってくれない。先頭に不良クラスタの大きいのがあると、もうお手上げ状態だった。でも「MASAMUNE」は後ろから読み取ってくれるから助かる。それに難しかったSDカードのサルベージ(救出)にも成功しました。
阿部 SDもビハインドでいけました?
下田 いける。4Gくらいのだと一週間くらいかかるけれど、結構いい確率です。コンパクトフラッシュもいけますよ。
阿部 みなさんにはバカなことやっているって思われているでしょうが、ご存知のように「MASAMUNE」はフリーウェア。でもみなさんに使ってもらうことでそのデータを蓄積し、壊れやすいハードディスクの統計を出したいと考えたんです。フリーウェア版で集めたデータを集計し、数値化してみたかったんです。現在、国内で約100ライセンスを配布していますが、ある程度の統計データが取れて見えてきたところです。
下田 実際にデータとして出てきたんですね。これまでにも特定のメーカーでおかしい製品がある、という話は出ていましたからね。
監物 それを阿部さんの会社がしっかり見える状態にしてくれている、ということですね。
阿部 それに、これまでリカバリーに関するメイドインジャパンのソフトってなかったんです。だからこそ「MASAMUNE」を形にしたかった。それに、メイドインジャパンの技術のすごさを、世界に届かせたいという思いもあります(笑)。
下田 「MASAMUNE」はみんなも使っているけど、そろそろ売ればいいのに(笑)。
阿部 近い将来、シェアウェアにすることも視野に入れています。
喜ぶ笑顔が何よりのやりがいに!
最後にこの仕事への思いや、やりがいをうかがった。
阿部 僕がこの仕事に特化したのは、東日本大震災がすごく大きかったですね。子どもや家族の写真データは失ってしまったら、二度と作り直すことはできない。どうにかして取り戻してあげたい。そんな思いからデータ復旧に挑戦し始めました。それで、あわよくば儲かればいいかなと(笑)。
監物 やっぱり、データが復旧するとお客様に喜ばれますし、修理品を返すときにも喜んでもらえる。こうして常に「喜び」を感じてもらえるのは醍醐味ですね。
阿部 ある意味、人助けというか、お金じゃないところはありますね。それは間違いない。
橘 本当にそのとおりだと思います。
下田 でも、僕はHPにも載せているけど、この仕事をやる上ではお客様の気持ちになってデータを救出したいという思いがある。それは私が子どもを持つ親であり、家族をもつ父親だからこそ思えることです。
監物 この業界もここ数年で同業者がものすごく増えましたよね。そんな中でも、自分たちならではの特色を出しながら、がんばっていきたいですね。
記事の内容は以上です。全て語り尽くすには時間が全然足りませんでした。当社のデータ復旧価格は半年以上考えて決めました。ほんの少しの重要データを復旧するのに何日もデバイスと向き合うこともあれば、30分ほどで全てのデータを無条件に復旧できることもあります。できるだけリスクを最小限に抑え、費用を均一化できるように、手順などを工夫しています。